飲食店衛生管理 薬剤師さん指導 中日新聞令和2年6月19日朝刊

飲食店衛生管理 薬剤師さん指導

飲食店の衛生管理HACCP
6月1日施工の改正食品衛生法で、すべての飲食事業者に食費衛生管理の国際基準「HACCAP(ハサップ)」に沿った衛生管理が求められるようになった。
ただ、小規模飲食店の中には導入に至っていないケースも少なくない。
安心安全な経営に役立ててもらおうと、岐阜市の薬剤師野崎利晃さん(44)が衛生管理の知識を生かし、地域の飲食店にアドバイスしている。
(秋田佐和子)

岐阜の野崎さん
HACCPは、原料の入荷から製品の出荷までの工程ごとに安全性を確保する衛生管理の手法。
改正法では各工程の異物混入や食中毒発生要因の分析、衛生管理計画の策定などが義務付けられ、計画の実施状況を記録することも求められる。
2018年6月の法改正以降、県や市は業界団体と連携して講習会を開くなど周知してきた。

ただ、岐阜市の繁華街・玉宮地区で漢方薬局と鍼灸院を営む野崎さんは、患者や友人の飲食店経営者らと話す中で「導入できている人は少ない」と感じていたという。

野崎さんは瑞穂市のこども園で学校薬剤師も務めており、衛生管理のノウハウがあった。
特に今年は新型コロナウイルスの影響で、テークアウトの弁当販売を始めた飲食店も多く、食中毒の発生が一層懸念される。
「地域の飲食店を少しでも応援したい」と、衛生管理指導のコンサルティング業務を始めた。

5月にイタリア料理店や焼肉店など業種別のガイドラインを作成し、ホームページで無料公開。
管理の煩雑さを和らげるため、冷蔵庫の温度や手洗いの実施の有無などをオンラインで記録保存できるようにした。
また、希望する岐阜地区の飲食店には有料で年3回チェックに訪れ、HACCPに基づく約50項目の検査表などを提供する。

引き合いは多く、これまで診療の合間に約20店を指導。
12日には瑞穂市のカフェ「ビエコショップ」で、水道水の水質やまな板の汚れを専用の機器でチェックした。
「どこに汚れが残りやすいか」を数値で示したほか、食材の搬入時間や調理場所の衛生状況などを細かく記録して「見える化」することの必要性を説いた。

指導を受けた同店オーナー亀山正法さん(50)は「衛生管理の度合いが目に見えたり数値化できたりすると説得力があり、参考になった」と話していた。

野崎さんは「きちんと衛生管理をしていることが説明できれば、店の信用にもつながり、売りになる。新型コロナウイルスで打撃を受けた飲食店の経営立て直しにつながれば。」と話していた。

HACCP(ハサップ)
原材料の入荷から製造・調理、出荷までの各工程で衛生管理をチェックし、安全を確保するための管理手法。
日本では食中毒の多発を受けて1990年代以降、大手食品メーカーや輸出業者などを中心に導入が進んだ。
訪日外国人が増える東京五輪・パラリンピックに向けて食品の安全性を高めるため、2018年6月の食品衛生法改正で全ての飲食事業者にHACCPに沿った衛生管理が求められることになった。
21年6月から完全義務化される。

飲食店の衛生管理HACCP