【速報】コロナ禍の影響で不妊治療が中止・延期になった方へ

不妊治療(体外受精・顕微授精などの特定不妊治療)を受けている皆さんは特定治療支援事業による特定不妊治療助成費制度を利用されていると思います。

2020年(令和2年)6月9日厚生労働省は以下のように決定しました。

【1】胚移植・採卵などが延期になる事によって助成金対象となる世帯所得730万円(平成30年:2018年の夫婦合算)未満であるが、今年度に限り令和2年6月1日以降の治療に対する助成金申請は平成30年(2018年)の夫婦合算所得にて申請が出来ます。

通常不妊治療助成金申請のためには前年の所得が条件となりますが、
5月31日までで不妊治療助成金を申請する場合は前前年の所得証明書が必要となります。

しかし、新型コロナの感染拡大に伴い不妊治療を延期した事によって6月以降に治療が再開すると前年の所得証明書が必要となります。前前年に育児休暇や、産休、失業中であった方は前前年の所得証明書によって不妊治療助成金を受けるためには5月31日までの短い期間で治療を終えないといけません。よって治療を延期する事で助成が受けられない患者さんのために今回このような措置を厚生労働省は決定しました。

② 令和2年度の不妊治療助成を受けるためには令和元年(2019年)の所得が対象となりますが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で今年の所得が730万円未満になった場合、昨年度と今年度の所得証明書を取得する事で今年度の不妊治療助成金対象となります。その場合令和元年と令和2年の所得証明書が必要となります。

医療従事者でもほとんど知らない事情

不妊治療における特定治療支援事業による不妊治療助成金を受けるための条件には夫婦の所得が730万円未満であるという条件があります。

助成対象期間は毎年4月1日から3月31日までの治療が対象となります。今治療中の方は令和2年度(2020年4月1日から2021年3月31日)の不妊治療に対して助成を受けることが出来ます。

先ほどの所得の条件というのは前年の所得(1月1日から12月31日)が対象となります。令和2年度の不妊治療助成のための条件は令和元年の所得合計が730万円未満であることが必須となります。

令和2年度分の不妊治療助成金を受けるためには市区町村発行による令和元年の所得証明書が必要となります。

ここで疑問が出てきます。

先ほどの速報で紹介した①についてですが、なぜ前前年(2018年)の所得の話が出てくるのでしょうか?2018年の所得は2019年度の不妊治療助成金申請の際に影響するのであって2020年度の助成金申請には影響が無いように思います。
しかし、前年の所得が決定するつまり住民税が決定するのは5月末日までなのです。4月1日から5月末日までの不妊治療費に限っての不妊治療助成金申請の条件である前年の所得は確定していないという事になり例年6月1日以降でないと前年の所得証明書は発行されないのです。

ですので今回決定されたこの令和2年4月1日から5月31日に限っては前前年の所得(住民税が確定している)が助成対象であったが、新型コロナウイルス感染拡大に伴う不妊治療の延期をする事によって前前年の所得によって助成金を申請するはずだった患者さんに対して今年度に限り前前年度の所得証明書が助成金対象とすることが出来るようになりました。

もう1つ不妊治療助成金を受けるための所得というのは所得税が計算されたものなのか、住民税が計算された所得なのかについて解説します。

所得税は「その年」、つまり1月から12月までの所得から計算される税金です。一方で、住民税は「前年」の所得をもとに計算されます。まず、所得税は、実際に金銭のやりとりがあった年の年末調整や確定申告をした時点で確定します。給与等の場合には、給与の支払者が支払時に源泉徴収し、年末調整で精算します。給与以外の収入がある人や2か所以上から給与の支払がある人は確定申告を行います。住民税は前年の所得にもとづいて税額計算が行われ、6月から翌年5月までの住民税が決定されます。たとえば平成30年に入社した新卒社員の場合、平成30年分所得税は平成30年1月から12月の所得に課税されます。令和元年度住民税は平成30年1月から12月の所得に課税され、令和元年6月から納めることになります。

助成金申請には所得証明書が必要なので5月31日までの不妊治療で助成金を申請しようとしても前年の所得証明書は発行されないので前前年という事は判りましたが、こちらを見ても判ります。

https://www.pref.gifu.lg.jp/kodomo/kekkon/boshi-hoken/kosodate/joseijigyo.html

※所得の範囲及び計算方法は、児童手当法施行令に準じます。
所得の計算方法はこちら
所得額算出表(試算用)(近日中掲載予定(H31.3.26))

所得の計算方法はこちらというリンク先PDFを見てみるとこれは所得税ではなく住民税の計算方法です。つまり特定不妊治療費助成制度は住民税が確定している日によって必要な所得証明書は変わるという事です。

ここで【2】の2年分の所得証明書が必要となるのですが、令和3年6月1日までは令和2年の所得証明書は市区町村での発行が出来ないので、確定申告でも可となるかもしれませんね。

令和2年4月から不妊治療が延期された経緯

新型コロナウイルス感染拡大の影響で4月1日付で日本生殖医学会は不妊治療の延期をという声明を発表しました。それに伴い全国の不妊治療を行う病院施設では患者さんへ延期の旨について説明が始まり、多くの患者さんが胚移植や採卵を中止するという事態が発生しました。当院でも風邪の疑いのある患者さんには呼吸器科への紹介状を出すなどの対応をしていました。

「新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大に伴う令和 2 年度における「不妊に悩む方への特定治療支援事業」の取扱い」について
新型コロナウイルス(COVID-19)感染者が急増する中、日本生殖医学会は令和 2 年 4 月 1 日付けで、不妊治療(人工授精、体外受精・胚移植、生殖外科手術などの治療)の延期を選択肢として患者さんに提示していただくよう声明を出させていただきました。
http://www.jsrm.or.jp/announce/188.pdf

不妊に悩む方への特定治療支援事業とは

不妊治療特定助成金

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000047270.html#:~:text=%E7%B5%A6%E4%BB%98%E3%81%AE%E5%86%85%E5%AE%B9,%E3%81%AF%E9%80%9A%E7%AE%97%EF%BC%93%E5%9B%9E%EF%BC%89%E3%81%BE%E3%81%A7%E3%80%82

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です